第41回 記事「やってみたい」を起点とした主体的な保育の展開
生きていくことが嬉しくて、楽しくて、面白い保育

この園は、保育は子供が主体、一緒に生活する保育士も主体。子供が幸せに生活することを守るのが保育士の役割と考えています。主体である子供の気持ちや意向を保育士は受け止めて、そのことを大切にする保育を実践するように、環境を整え、準備します。保育士の想いが強くなりすぎて、最終的なところで型にはめていかないように、子供と一緒に考え、作っていきます。子供がやりたいと思った活動に向けた提案を、大人が手や目をかけて整えずに、「どうしようか、どうやったらいいのか」と、保育士は子供に寄り添いながら考えます。「この試行錯誤が最高のご馳走」と園長は言います。「どんなこともやってみようと試行したら、うまくいきませんでしたということもあるけれど、次は、どうやったらうまくいくかと考えたら2度美味しい」と保育士もワクワクできる保育が展開されています。
「行ってみたい!」から始まる社会とのつながり

この園では子供たちが保育生活の中で興味を示して「行きたい」と言ったところに出かけることを「遠足」と称しています。
お寿司屋さんの遊びが始まると、保育士はお寿司に関連する本などを準備して、一緒に読んでいるうちに、「お寿司の種類が知りたい」「本当のお寿司屋さん見てみたい」と子供たちの興味が広がります。そうした時に、実際にお寿司屋さんを見学し、「遠足」先で知ったことを遊びの中で再現していくことで、帰ってからのお寿司屋さん遊びは、寿司のネタが増える、描写がリアルになるなど、さらに広がっていきます。昨年の保護者発表会では、うどん屋さんをオープンさせて、保護者の前でうどんを作って一緒に食べるという行事に発展しました。今年の保護者発表会では、お寿司屋さんが登場するかもしれない、と保育士たちは密かに期待しています。
「博物館に行きたい」という子供たちの意見を聞いて、ランチ付きで出かける「遠足」も行われています。博物館に電車に乗って行き、専門家からお話を聞いて、レストランで昼食を食べて帰ってくるという子供たちにとっては楽しくて面白い体験です。保育士は博物館のレストランに予約が取れるか調べて予約を取ります。最寄りの駅から電車に乗るときは実際に改札機の前で保育士はそっと見守りながら、行き先の駅名や切符はいくらで買えるのか子供たちに探してもらいます。文字や数字が読める子供は読めない子供に教えたりして、券売機から切符を買って電車に乗るワクワクする新しい体験です。改札を通るときも、先頭の保育士が「ありがとうございます」と言うと、後から「ありがとうございます」と子供たちの声が続きます。
この園の「遠足」は、子供たちを社会へつなぐ「面白くて楽しい保育」として行われています。
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