第49回 記事滑り台が『大丈夫』になった2歳児にかけた言葉
届かない「大丈夫」

何をするにも怖がり、いろいろなことに挑戦して頑張るけれど、できないと途中でやめてしまう2歳児がいました。いつも遊びに出かける公園で、滑り台の手すりにつかまり階段を昇るまではできるのですが、滑り降りてくることができません。担任の保育士は、一人ひとりのタイミングがあると考えて、この子供にいつも「大丈夫だよ」と励ましながら寄り添っていました。しかし、この子供の心には「大丈夫」という言葉は届いていないようでした。
この園では月に1回、保育や子育て支援の経験者である外部の専門家から、保育の日常を観察してもらい、アドバイスを受けています。この2歳児の様子について相談したところ「この子にとっては『大丈夫』なことではないのでは?」、「『大丈夫』と言わない方がよいのでないか」とアドバイスされました。担任の保育士はどのような言葉かけが適切なのかいろいろ考えてみました。
寄り添いから広がる「大丈夫」

そこで思いついたのは、滑り降りてくるところで、その子に向かって「ここにいるね」「先生がここで待っているからね」と声かけをしてみることでした。すると、その子はいつものように登ってからしばらくは躊躇していましたが、なんと勇気を出したように、滑り降りてきました。そして、保育士がしっかりと受け止め「できたね!」と笑顔で褒めると、嬉しそうに続けて挑戦したのです。滑り降りてくることにだんだん慣れて、登って、滑り降りてと繰り返しているうちに、自信がついたようで、顔つきも変わってきました。その日、最後に滑り降りてきたときに、その子自身の口から「もう大丈夫!」という言葉がこぼれたのです。
数日後に同じ公園に行くと、始めはちょっとこわごわと滑り台に登りましたが、「先生がここで待っているからね」と声かけすると、滑り降りてくることができました。また、次の日に公園にいったときは、声かけしなくても滑り台に登り、滑って降りてくることができるようになり、他の遊具にも興味を示し、挑戦する姿が見られました。怖がりながらも、少しずつ経験を重ねて、いろいろなことに自信が広がっていったようです。
遊びだけでなく、食事の様子にも変化がありました。それまでは白いご飯しか食べなかったのですが、おかずにも手を伸ばし、少し味を確かめてから、食べてみるようになったのです。初めて食べるものは、舐めて味を確かめたら、「おいしい」と言って食べ始め、おかわりをすることもあります。
大人もですが、子供も未知の体験に対して、不安や恐怖を感じます。それを乗り越えようとする挑戦を、保育者の関わりや言葉が支えます。信頼する保育士が滑り台の下で自分を受け止めてくれるという安心感が、子供の挑戦を促しました。「大丈夫」は子供自身が体験から獲得した言葉です。
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