第55回 記事日常の保育を見直す園内研修
事例エピソードを丁寧に読み解き保育の質に対する視点を改善

こちらの園では、日々の保育を見直して改善する機会を設けるため、3年前から外部講師による園内研修を行っています。乳児担当と幼児担当の保育者に分け、それぞれ月に1回、各1時間の研修です。
幼児担当の保育者には、それぞれ月ごとのテーマに沿った事例エピソードを作成してもらい、その保育内容を読み解きます。例えば、今月は「ごっこ遊び」の事例を記入してください、といった具合です。そのごっこ遊びの中でどのような子供の育ちが見られたのか、考察をしていきます。状況がわかりやすいよう、事例エピソードは写真付きで作成します。
幼児担当の保育者は、研修会に参加するうちに、どういった事例エピソードが良い保育を伝えているのかという概念と、保育の質に対する視点が変わってきました。
例えば子供たちが紙を切って遊んでいるときに、付かず離れず見守り、それでいて十分に紙を切って遊ぶことを楽しんだ場面を捉えて糊を差し入れます。受け取った子供たちは、その糊を使ってつなげたり貼り合わせたりして、自分たちで新しい遊びを展開していきます。
こうして遊びの中で起こっていることを見守り、適切なタイミングを逃さず、遊びが広がるよう助言や提案を行ったりすることを丁寧に事例として汲み上げることによって、普段の保育の中での意識が変わってきました。
環境設定の評価・検討を行い、改善点を挙げてすぐに反映する

乳児担当の保育者の研修で特徴的なのは、タイムスケジュールと環境設定の見直しです。月ごとの保育環境は保育内容によっても変わるため、常に細かな変化を記録し、担当者間で共有した上で見直しを検討します。
例えば「水遊びが始まるとどうしても着替えに時間がかかる」などの問題が浮上します。その場合は「入室のタイミングは5分早めよう」や、「給食はこの時間に食べて、午睡はここまでにしたい」などの意見を出し合ってすり合わせを行い、遊びを終える時間を逆算し、保育に反映します。
また環境設定は評価のうえ見直しを行います。
保育室内は、棚を含め全てが移動できるようになっています。育ちや遊びの内容によって移動し、子供が遊びに慣れてきた時に変化をつけたりと、環境設定の評価と保育の意図に合わせて毎月模様替えを行います。
例えば人気のコーナーに遊びたい子供が集中してしまった事例では、人数が集中して遊び込めない子供が複数出てしまったため、人気のコーナーにもかかわらず揉め事などのトラブルがおきる場所になってしまいました。
そこで解決策として、人数が集中しないよう動線を考え、適切な距離をとって同じコーナーをもう一つ増やすことにしました。
結果としてトラブルが減り、子供が集中してしっかり遊び込めることで、不満が他者へ向かいづらくなることが改めて認識でき、問題をしっかりと改善することができました。また、新しく興味関心をひくコーナーを提案・導入するなど、子供たちが楽しめる新しい設定も検討します。
コーナー保育等、保育室の環境設定を園内研修で見直すようになったことにより、子供たちが遊び込める居場所作りが深化しています。
外部講師の指導をヒントに、子供の姿を受け止めながら、保育者どうしが対話を通じて保育の質を高めるよう努めているのです。
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担任や主任だけでなく、外部講師や他の保育者とも保育を評価・検討する機会を設けています。こうした協働により、活動の結果だけではなく、見守りや声掛けなど“活動のプロセス”に焦点を当てることができ、保育の質の向上につながっています。
監修 矢藤誠慈郎
(一般社団法人全国保育士養成協議会 常務理事)