第11回 記事他職種と連携して子供の育ちを支える -「栽培・収穫活動」を通じて-
保育所等では、保育士以外にも様々な職種の職員が働いています。そのなかで、保育士は、調理員、栄養士、看護師、用務員など様々な職種の職員と連携して、それぞれの専門性を発揮しながら子供たちの保育にあたっています。
こちらの保育園の園庭では、ところ狭しと様々な植物が栽培されています。それらの多くは、野菜や果物です。ヤマモモやブドウ、実をつける桜、ミニチュアサイズの田んぼでは稲を栽培し米の収穫も行なっています。田んぼの近くにはササゲのさやが収穫を待っています。ササゲは赤飯に使われる小豆によく似た豆です。園長先生は、保育園のミニ田んぼで収穫した米は、お迎えに来た保護者と子供たちで脱穀、籾摺りを行い、後日食べます。さやを乾燥して収穫したササゲ豆は、米と一緒に炊き込んで皆でお赤飯を作って保護者と一緒に食べる行事を計画しています、と楽しそうに話してくれました。
ある年のこと、5歳児が園庭の砂でパンケーキを作り、園で採れたヤマモモの実を飾ってカフェごっこをしていました。子供たちは、前年度の5歳児クラスがヤマモモの実を収穫してジャムとジュースを作っていたことをよく覚えていて、自分たちもやってみたいと真似して遊んでいたようです。この砂場のカフェごっこは、やがて本物のヤマモモを使ったカフェのオープンへと発展していきます。子供たちが保育士と話すなかで、今年はカフェだからジュースだけではなくクッキーも作りたいと話が盛り上がり、ヤマモモの実を使ったジュースと園で収穫したハーブを使ったクッキーを作ることになりました。このカフェは、当初の年間行事には予定していなかったのですが、保育士は子供たちの気持ちを大切にし、急遽、家庭にも声をかけて、カフェのオープンを実現しました。当日は、保護者の方も大勢参加してくださり、子供たちのカフェは大盛況だったそうです。
園庭の栽培・収穫活動は5歳児クラスばかりではありません。5歳児クラスのヤマモモジュースとクッキーづくりを見ていた3歳児クラスでは、桜の実を使った色水遊びから発展して、桜の実を使ってジュースを作ってみんなで飲みました。1~2歳児クラスの子供たちもプランターでコールラビを育て収穫し調理員さんに調理してもらって食べました。野菜が苦手な子供も自分たちで収穫した野菜は特別で、美味しそうに食べていたそうです。 春には年上のお兄さん、お姉さんが畑の土づくりをしている姿を見て、土に触れることが得意でなかった1歳児の子供も、土いじりに興味を示して土遊びをする姿が見られました。
栽培・収穫活動から調理へと発展させる活動は「食育」の活動として多くの保育園で取り組まれています。こうした活動には保育士だけでなく、調理員や用務員、看護師など多くの職員が関わっています。事例の保育園では、用務員の方が率先して園庭の植物のお世話をしているそうです。 このように保育園には子供が関わる環境を整えたり、毎日の給食のみならず収穫した野菜を調理したり、衛生面や健康をチェックしたりする他の職種が働いています。保育士とは別の視点で子供の成長を支えてくれる保育士の頼もしい仲間たちです。
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